在宅継続期間

家族介護者同居の居宅サービス利用高齢者における在宅継続に関連する要因
―介護保険給付レセプトを用いた分析から―

研究要旨

研究目的

約7割の高齢者は要介護の状態になっても自宅で生活する事を望んでお り、より長く自宅で生活することができることに関連する要因を検討することは重要で ある。本研究では、介護保険制度導入後、要介護認定を受け、家族同居の居宅サービス 利用高齢者の在宅継続に関連する要因を明らかにすることを目的とした。

研究方法

鹿児島県肝属郡の4町から提供を受けた介護保険給付レセプト(2001 年 11 月から2003 年10 月までの24 カ月間)と2001 年11 月に同町の全居宅高齢者を対象 に実施された訪問調査のデータ(回収率99.7%)を用いた。家族と同居しており、要 介護1から5の65 歳以上の高齢者432 名を分析対象とした。アウトカムは、24 か月間 の在宅継続とした。介護度で層別化した後(低介護度群:要介護1~3、高介護度群: 要介護4・5)、多重ロジスティック回帰分析を行った。

研究結果

日本語版ザリット介護負担感尺度のスコアが低いことは両介護度群で在宅継 続に関連していた(低介護度群: OR 2.11; 95% CI 1.31–3.43, 高介護度群: OR 5.03; 95% CI 1.04–31.1)。低介護度群では介護度が改善したこと(OR 3.65; 95% CI 1.37–10.21)、か かりつけ先が診療所(OR 1.76; 95% CI 1.04–3.01)であることが、高介護度群では訪問看護 の利用(OR 37.39; 95% CI 3.31–879.1)、主介護者の属性(女性, OR 29.76; 95% CI 2.30–806.6; 64 歳以下, OR 6.72; 95% CI 1.11–64.7)が、在宅継続に関連していた。

考察

介護度に関わらず、家族介護者の負担軽減は在宅継続には不可欠であると考え られた。低介護度群では、介護度や慢性疾患の悪化の防止、高介護度群では、訪問看護の 利用や年齢の若い、女性介護者のサポートが必要である。

結論

両介護度群において介護保険導入後も、家族介護者の要因が在宅継続に重要な 役割を果たしており、今後は介護者支援も含めた在宅継続における居宅サービスの効果 に関する評価が必要であると考えられた。

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A.研究目的

 先進国各国では、高齢化社会に伴い増加した要介護高齢者に、社会がどのように対処して いくのかが大きな課題となっている。日本では、この課題に対処し介護の社会基盤を強化 するために、2000 年に介護保険制度が導入された[1]。介護保険制度の目的の一つは、要介 護高齢者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を送ることができるよ うにすることであり、その最終目標の一つは、可能な限り高齢者が住み慣れた地域で生活 を続けられることである[2]。

 介護保険制度導入以降、介護保険サービス利用者の数は149 万人(2000 年4 月時点)か ら329 万人(2005 年4 月)まで増加した。それに伴い介護保険の総費用も3.6 兆円(2000 年度)から7.1 兆円(2005 年度)と急速に増大し、現行制度のままでは、財政逼迫による 保険料の大幅上昇が見込まれ、制度の持続可能性が緊急の課題となった[3]。

 この危機的な状況に対処するため、2006 年4 月に介護保険法等の一部を改正する法律が 施行された。改正法の主な内容は、①予防重視型システムの確立、②施設給付の見直し、 ③地域密着型サービスなどの新たなサービス体系の確立、④介護サービス情報の公表など サービスの質の確保・向上のための見直し、⑤保険料負担の在り方や要介護認定の見直し を含めた制度運営の見直しの5点であった。②の施設給付の見直しでは、居住費・食費が 保険給付対象から外れ、施設入所者の自己負担が増大した。

 しかし、施設利用者の数は減少していない[3]。さらに、特別養護老人ホーム(介護老人 福祉施設)は超過需要の状態であり、約20 万人の入所待機者が存在する[4]。しかし、約 70%の高齢者は要介護状態になっても自宅で生活したいと考えていることが明らかになっ ている[5]。これらのことから、在宅継続に関連する要因を明らかにすることは重要である。

 日本では、主介護者の約80%は家族介護者であり[6]、 施設入所も経済状態[7]や介護能 力[8, 9]などの家族介護者の要因によるものが大きい。そのため、特に家族が主介護者と なっている要介護高齢者において、どのような要因が存在することでより長く在宅継続で きるのか、また介護保険サービスは在宅継続の要因となっているのかを明らかにすること は重要であると考えられる。

 現在までに、友達がいること[10]、住宅改修をしていること[11]、認知症高齢者のため の専門家のネットワークが存在すること[12]、家族介護者が在宅介護を希望していること [13]、持家であること[14]、配偶者と暮らしていること[15]が報告されているが、公的サ ービスの要因を考慮した研究は少ない。その中で、在宅継続の要因として、公的サービス を考慮した研究では[16]、短期入所サービス、福祉用具貸与サービス、デイケアサービス の利用が報告されているが、家族の要因を考慮することができなかったことが限界として 述べられている。

 これらのことから、在宅継続には、高齢者の属性、家族介護者の属性、公的サービスの という複数の要因が影響していると考えられる。しかし、これらの要因を全て考慮した研 究はない。そこで、本研究は、公的データである介護保険給付レセプトデータベースを用 い、要介護高齢者の要因、介護保険居宅サービの要因、家族介護者の要因を含め多角的に検証を行い、要介護高齢者の在宅継続に関連する要因を明らかにすることを目的とし実施 した。

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B.研究方法

1)研究対象地域

 研究対象地域は、鹿児島県旧肝属郡内之浦町、高山町、吾平町、串良町の4町である(内 之浦町・高山町は2005 年7 月に肝付町となり、吾平町・串良町は2006 年1 月に鹿屋市と 市町村合併が行われている)。旧肝属郡4町の総人口は40,163 人(2001 年10 月時点)、総 面積は427km2 と農村地域である。65 歳以上の高齢者数は11,638 人、人口高齢化率は30%で あり、同時期の全国平均18%よりも高い高齢化率であったが、2025 年には人口高齢化率の 全国平均は本研究対象地域と同様に30%に達すると予測されている[17] 。本研究対象地域 の2001 年11 月時点の要支援・要介護認定者数は2553 人であり、65 歳以上における要支援・ 要介護認定率は約22%、2001 年の要支援・要介護認定率の全国平均は約14%であったことか ら、高い要支援・要介護認定率であった。

2)使用したデータ

使用したデータは以下の3 つである。

  1. 鹿児島県肝属郡4町から提供を受けた介護保険給付レセプトデータベースからは (2001 年10 月から2003 年11 月までの分)、介護保険サービスの利用状況(各サービ スの利用の有無、利用日数)と高齢者の性別・年齢・毎月の介護度の情報を得た。(資 料5)
  2. 2001 年11 月に実施された訪問調査による「介護保険事業計画に関する高齢者等実態調 査」のデータ(対象:旧肝属郡在住の65 歳以上の高齢者全員、回収率99.7%)のうち、 在宅要介護(要支援)者分。高齢者の特性(介護が必要になってからの期間、要介護 認定時の疾患、家族構成、住宅について、所得段階、かかりつけ先、いざという時に 助けてくれる友達の数)、主介護者の特性(性別、年齢、介護への不安、介護に意見が 反映されているかどうか、今後の介護への希望、仕事の有無、Zarit 日本語版介護負担 感尺度のスコア)の情報を得た。(資料6)
  3. 介護保険資格喪失(転居・死亡)データ(2001 年10 月から2003 年11 月までの分)。 このデータには、死亡もしくは転居した年月日の情報が含まれ、観察期間中に対象者 に死亡もしくは転居があったかどうかを判別するために使用した。

これらを共通のID で結合し、1 つのデータベースを作成し分析に使用した。

3)観察期間と分析対象者

 観察期間は2001 年11 月から2003 年10 月の24 カ月間とした。

 対象者の包含基準は、鹿児島県旧肝属郡4町に在住し2001 年11 月時点で要支援・要介 護認定を受け、自宅で生活をしている者とし、1551 名が該当した。除外基準は、介護保険 サービスを利用していない者(472 名)、64 歳以下の者(25 名)、観察期間中に死亡もしく は転居した者(124 名)、観察開始月の介護度が要支援の者(279 名)、家族介護者が存在し ない者(219 名)とした。その結果、最終分析対象者は432 名となった。

4)アウトカムの操作的定義

 まず初めに、介護保険給付レセプトデータベースより、各月に何らかの居宅サービス (訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリ、通所介護、通所リハビリ)の利用があ ったかどうかを確認した。次に、居宅サービスの利用があった月は在宅で療養していた月 (以下、在宅月)と仮定し、観察期間24 か月分全ての在宅月を調査した。24 か月全てが在 宅月であった者を「在宅継続」、それ以外の者を「在宅非継続」とし、2区分のアウトカム を設定した。尚、在宅月ではない月の可能性として、施設入所、入院、介護保険サービス を利用していない、という3つの可能性が考えられた。施設利用に関しては、介護保険給 付レセプトデータベースで確認が可能であったが、入院・介護保険サービスを利用してい ないことに関しては判別ができなかった。しかし、サービス未利用者は対象から除外して いる事、要介護1から5に含まれるサービス未利用者の割合は約20%であり[18, 19]、さ らにこの中には入院中の者が多く含まれていると考えられることから、入院の可能性が高 いと考えられた。

5)分析方法と手順

 分析対象者は要介護1から要介護5までの者であった。しかし、要介護度によって身体 状況が異なり、結果として居宅サービスの利用の傾向も異なること、さらに全国的な傾向 として、介護度が高ければ高いほど施設入所者の割合が高くなるということから、介護度 が交絡要因になり得ると考えられた。そのため、はじめに介護度による層別化を行い、要 介護1から3を低介護度群、要介護4、5を高介護度群とした。

 次に、各介護度群で在宅継続群と非継続群に分け、要介護高齢者の特性、主介護者の特 性、居宅サービス利用について群間比較を行った。カテゴリー変数にはカイ二乗検定また はフィッシャーの正確検定を、順位変数にはウィルコクソンの順位和検定を用いた。その 後に、各介護度群における在宅継続の予測因子を明らかにするために、多重ロジスティッ ク回帰分析実施した。多重ロジスティック回帰分析へ投入した変数選択の基準は、①群間 比較でp値が0.25 以下[20]、②モデル調整のため、年齢、性別、ベースラインの介護度、 介護度の変化度、介護が必要になってからの期間を強制投入、③先行研究で在宅継続の要 因として報告されている要因を代替する変数として、家族構成、友達がいる、持ち家であ ること、住宅で困っていることがあるかどうか、を投入した。モデル構築の方法はステップワイズ方を用い、取込基準、除外基準はともに有意水準α=0.2[20]とした。全ての分析 に統計パッケージSAS version9.13 (SAS Institute, Inc., Cary, NC)を使用した。

6)倫理的配慮

 本研究は、筑波大学人間総合科学研究科研究倫理委員会の承認を受けて実施した(課題 番号 第22-30 号)。

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C.研究結果

 最終分析対象者432 名のうち、低介護度群は367 名であった。このうち、在宅継続群は172 名、 在宅非継続群は195 名であった。さらに、非継続群のうち、83 名が施設入所、残りの112 名は入院 によって在宅が非継続になっていた。高介護度群は68 名であった。このうち、在宅継続群は37 名、 在宅非継続群は31 名であった。さらに、非継続群のうち、16 名が施設入所、残りの15 名は入院に よって在宅が非継続になっていた。(Table 1)

 多重ロジスティック回帰分析の結果、低介護度群では(Table 2)、介護度が改善したこと (OR 3.65; 95% CI 1.37–10.21)、かかりつけ先が診療所(対病院)(OR 1.76; 95% CI 1.04–3.01)、 高介護度群では(Table 3)、高齢者の年齢が65 歳から74 歳(OR 23.89; 95% CI 2.36–524.9)、 ベースラインの介護度が要介護5(OR 12.58; 95% CI 1.88–166.1)、主介護者が女性(OR 29.76; 95% CI 1.01–1.03)、主介護者の年齢が65 歳以下(OR 6.72; 95% CI 1.11–64.7)、 訪問看護の利用が高利用率(OR 37.39; 95% CI 3.31–879.1)が在宅継続の関連要因となっ ていた。介護負担感が低いことは両群で共通した関連要因となっていた(低介護度群:OR 1.83; 95% CI 1.09–3.10、高介護度群:OR 5.03; 95% CI 1.04–31.1)。

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D.考察

 本研究は、家族介護者が同居している要介護高齢者の在宅継続に関連する要因を明らかにするた めに実施した。在宅継続の関連要因は各介護度群によって異なっていたが、主介護者の介護負担感 が低いことは、各介護度群で共通する要因となっていた。

 先行研究では介護負担感が高いことと施設入所[21, 22]、要介護高齢者の死亡率の上昇[23]が報 告されている。日本の介護保険制度は、要介護高齢者に介護サービスを提供することによって、 家族介護者の負担を間接的に軽減することを目的としているが[24]、介護保険サービスは家族介護 者の介護負担を軽減する効果は無いことが報告されている[25-27]。さらに、高介護度群では家族介 護者の属性が在宅継続の関連要因となっていた。在宅要介護高齢者を対象に日本で行われた研究で は[28]、男性介護者の場合、介護が不十分になりやすく、不十分な介護は死亡や入院・施設入所と 有意に関連していたことが報告されていることから、伝統的に介護において女性介護者は重要な役 割を果たしていると考えられる。しかし、世帯構成の変化、女性の就業率の上昇などにより介護を 取り巻く状況は変化しており、高齢者が高齢者を介護する、いわゆる老老介護や男性の介護者が増 加している[6]。現在重度の要介護高齢者が在宅生活を継続するには、家族による介護は不可欠であり、介護保険サービスはその補完という位置づけになっていると言われている[4]。このように、介 護保険制度が家族介護者へ依存し続ける限り、家族介護者への支援体制は早急に導入されるべきで あろう。

 高介護度群では、訪問看護の利用が在宅継続の関連要因となっていた。サービス利用の要因に関 しては、サービスを利用した人の属性の影響、サービス利用そのものの影響という二つの側面から 考察する必要がある。まず、訪問看護サービスを利用した人の属性に関して述べる。介護保険サー ビスの利用は、家族の意向[9, 29]、世帯の経済状態[30]に影響をうけることが報告されてお り、訪問看護の利用にも何らかの家族の意向や経済状態が影響した可能性がある。まずは、 今後の介護への家族の意向がアウトカム(在宅継続)に影響したのか、家族の意向が訪問 看護サービス利用に影響したのかを検証するために、本研究の対象者を、「今後の介護への 家族の意向(1.家族のみで在宅介護 2.居宅サービスを利用し在宅介護 3.施設 4. その他)」で層別化し、訪問看護の利用の有無と在宅継続についてのサブ分析を行った。居 宅サービスを利用し在宅介護を行っていきたいと考えている家族の層では、在宅継続群に おいて有意に訪問看護の高利用率者が多かった(p 値= 0.03)。さらに、在宅継続意向の変数 は群間比較においてp値が0.12 であったため高介護度群の多変量モデルへ投入したが、ス テップワイズの過程で除外された。そのため、訪問看護サービスが高利用率であることが 在宅継続へ影響したことも十分考えられた。世帯の経済状態に関しては、高介護度群の対 象者の90%以上が、所得段階2もしくは3という非課税世帯であり、所得段階で見る限り では経済状態はほぼ同等であった。そのため、この対象者においては経済状態の違いがサ ービス利用に与える影響は少なかったと考えられた。これらのことから、サービス利用そ のものの影響が十分考えられた。

 次に訪問看護サービス利用そのものの影響について述べる。村嶋らは[31]、日本での看 護師による主な在宅ケアのうちのひとつは高齢者ケアであり、高齢者のケアにおける看護 師の役割は、直接的な援助の提供よりも、むしろ疾病管理やケアマネジメントの役割へと 移行していると述べている。要介護認定を受けている高齢者の訪問看護の利用者数は要介 護5で特に多く[32]、高介護度群では一定の医療ニーズが存在する。また、高介護度群にお いて、訪問看護の利用率と施設入所に関して有意な関連性は認められなかった(p=0.15) ことから、訪問看護の利用が高利用率であったことは入院を回避することに効果があった と考えられる。訪問看護師が定期的に十分に介入することで、疾病の悪化の早期発見や適 切な内服管理の実施、また医師との連携が図りやすかったことなどにより、入院が回避さ れ、結果として在宅が継続できた可能性が考えられた。

 各介護度群では、いくつかの高齢者の要因が在宅継続に関連していた。一つ目は、かか りつけ先が診療所であることである(低介護度群)。この要因に関しても、診療所を利用し た人の属性の影響、診療所利用そのものの影響の両側面から考察をする必要がある。まず、 診療所を利用した人の属性の影響に関して述べる。日本ではプライマリーケアシステムは 導入されておらず、患者はどの医療機関に行くのかを自由に選択することができる。しかし、同じ疾患でも診療所がかかりつけの者は疾病状態が軽い傾向があり、再入院のリスク も低い[33]。さらに、慢性疾患の診断数が多いことは施設入所の[34]、慢性疾病の重症度そ のものが施設入所[35, 36]や再入院[37]のリスクになることが報告されている。さらに、低介 護度群では訪問看護の利用がないことが在宅継続に関連していた。訪問看護の主な役割は、 医療ニーズへの在宅での対応であることから、在宅継続者は医療ニーズがないこと、すな わち疾病状態が軽かったと考えられる。これらのことから、低介護度群では疾病状態が軽 いことが在宅継続の要因となっていた可能性がある。

 次に、診療所利用そのものの影響に関して述べる。医療ニーズのある要介護高齢者を対 象とした研究では、かかりつけ医が診療所の医師である場合は、総合病院の医師である場 合よりも在宅療養は継続しやすく、在宅療養の継続のためには身近な診療所の医師をかか りつけ医とすることの必要性が示唆されていることから[38]、在宅療養において診療所の医 師は重要な役割を果たしていると考えられた。しかし、日本の診療所を受診している患者 の特徴や、そこで行われる治療、そのアウトカムに関しての情報を提供する研究はなく[33]、 なぜ診療所の医師をかかりつけにしたことで在宅継続ができたのかの詳細を述べることは 困難である。高介護度群ではこの要因は有意ではなかったことからも、この要因に関して は、診療所を利用した人の属性の影響が大きいと考えられた。

 二つ目は、介護度が改善したことである(高介護度群)。過去の報告では、介護度の経時 的な悪化は施設入所のリスクを高めることが報告されている[39, 40]。介護度を維持もしく は改善させることは、高齢者が独居であれば活動範囲や生活を維持することに、介護者が いる場合はその負担を少なくすることに繋がると考えられ、在宅継続には重要な要因であ ると考えられる。介護度の維持可能性に関して、介護度は新規認定時の要介護度が軽いほ うが維持されやすいことが示されている[41]。これらのことから、介護度を維持させること は、その可能性も含めて低介護度群では在宅継続に有用である可能性が示唆された。しか し、一方で高介護度群では要介護度5であることが在宅継続に関連していた。介護度に関 して、一般的な傾向として、介護度が高ければ高いほど在宅生活者の割合は減少し、在宅 で生活できるかどうかは介護度に依存していると考えられる。そのためベースラインの介 護度が5であることが在宅継続に関連していたことは、本研究の結果やこの傾向と相反し ているように思えるが、先行研究ではADL 障害が高度である方が自宅にいられることが示 されている[2, 13, 38]。これらの先行研究では、その考えられる可能性として、介護度が重 度であるということは、自力で動くことはほぼ困難であるため、転倒や交通事故などへの 懸念から常時注意深く高齢者を見守る必要性はなくなること、排泄ごとに移動を必要とし ないなど(おむつを使用していることが多い)、介護をしやすい側面もあったのではないか としている。これらのことから、介護負担が少ないことが影響した可能性がある。しかし、 本研究においては、要介護4と5の介護者では介護負担感の尺度には差がなく(p 値=0.88)、 他の理由も存在したと考えられる。考えられる一つの可能性は、要介護5においては、要 介護4に比べて介護期間が長く、3年以上の者が多かった(p 値=0.02)。高介護度群では、介護者は様々な介護技術が必要となり、様々な介護上の問題も発生しやすいと考えられる が、介護者が介護上の問題やトラブルなどにある程度対処する能力をすでに有していた可 能性が考えられた。

 三つ目は要介護高齢者の年齢が65 歳から74 歳であることである。過去の報告では、年 齢が高いことと施設入所の関連性が報告されている[42-44]。さらに、75 歳以上の高齢者の 約77%は要介護状態であり、年齢が高くなればなるほど介護が必要となる[45]。このとから、 要介護年齢そのものが在宅継続に影響したと考えられた。

 本研究にはいくつかの限界があることにも言及しなければならない。1つ目は、観察期 間が24 カ月であるということである。つまり、人によって介護期間が異なるため、その24 カ月の位置付けも人によって異なるということである。しかし、「要介護になってからの期 間」でモデルを調整済みであり、介護期間の違いには対処できたと考えられる。2つ目は、 居宅サービスを利用していない空白の月の可能性として、施設入所・入院・居宅サービス の利用の停止が考えられるが、入院は医療保険で管轄されているため、入院したか居宅サ ービスの利用を停止したのかは区別できない。しかし、サービス未利用を対象選択の時点 で除外している。また、要介護1から5ではサービス利用者は要介護認定者の約20%程度 だが、この中には入院中の者も含まれ、サービス未利用者のインパクトはそれほど大きく なく、空白の可能性は入院と仮定することに問題はなかったであろう。3つ目は日本の農 村部の1地域の要介護高齢者が対象であるため、一般化可能性には注意を要するというこ とである。4つ目は、データの限界からサービスへのアクセスのしやすさが結果にどのよ うに影響したかまでは評価できなかった。また、在宅継続と要因との因果関係の証明には 課題が残った。そのため、今後は、どのような属性を持っている人が各種居宅サービスを より利用しているのか、またその属性の影響を調整した上でもその居宅サービスを利用し ている人は、より長く在宅を継続しているのかどうかを検討できる経時的デザインに基づ いた研究により、在宅継続に対する居宅サービスの効果の評価が必要である。

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E.結論

 介護負担感が低いことは、両介護度群で共通の要因となっており、介護度にかかわらず 介護負担を軽減することは在宅継続には必要不可欠である。低介護度群では、要介護度や 慢性疾患の悪化、高介護度群では、訪問看護サービスの利用、若い女性介護者へのサポー トが必要であることが明らかになった。

F.研究発表

  1. 論文発表
    なし
  2. 学会発表
    大山裕美子,田宮菜奈子,柏木聖代,佐藤幹也,大脇和浩,矢野栄二. 居宅サービス利用者の在宅継続に関連する要因―介護保険給付レセプトを用いた分析から―.第69 回日本公衆衛 生学会総会(東京).平成22 年10 月.

G.知的財産権の出願・登録状況(予定を含む。)

  1. 特許取得
  2. 実用新案登録
  3. その他

なし

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  4. 岸田研作, 谷垣靜子: 在宅サービス 何が足りないのか? 家族介護者の介護負担感の分析. 医療経済研究 2007, 19(1):21-35.
  5. The 6th International Study on Living and Consciousness of Older Citizens [http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h17_kiso/index2.html]
  6. The Complihensive Survey of Living Condition [http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html]
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