ハンドル形電動車いすの安全性

ハンドル形電動車いすを使用している高齢者の事故およびヒヤリ・ハット体験に関する分析

研究要旨

研究目的

事故を防ぐ方策を検討するために、ハンドル形使用者の事故およびヒヤリ・ハット体験の内容について明らかにすることを目的とする。

研究方法

ハンドル形を使用している者24名を対象とした。対象者のうち男性は6名、女性は18名であった。年齢は50代が1名、60代が2名、70代が5名、80代が15名、90代が1名であった。直接個別ヒアリング法によってデータを収集した。

研究結果

事故の経験があるものは17%(24名中4名)であった。4名のうち1名が4回の事故を経験していた。事故の内訳は「ハンドル形の操作の誤り(5事例)」、「ハンドル形同士の追突事故(1事例)」「自動車との接触事故(1事例)」であった。ヒヤリ・ハットの経験がある者は50%(12名)であった。「舗装されていない、破損しているなどのバリアフリー化されていない道路を走行中に車体が傾いた」、「路上が砂で覆われているところで車輪が滑った」などの経験をもつ者が最も多かった(50%,12名中6名)。さらに、交差点を渡り切る前に信号が赤になってしまった経験を挙げた者がいた(25%,3名)

考察

ハンドル形使用者のうち、ハンドル形の操作に不安を感じている者はそれほど多いとは言えなかった。しかし、事故やヒヤリ・ハットの経験をした者のなかには、操作や判断を誤っている者がいた。また、使用者本人が危険のないように気を配っていたとしても、事故やヒヤリ・ハットに結びついていることがあった。これらの結果をふまえ、「ハンドル形購入時の教育の徹底」「ハンドル形購入後の使用者および機器に関するフォローの必要性」「道路のバリアフリー化」に分けて具体的な対策を論じた。

結論

事故やヒヤリ・ハット体験を防ぐためには、ハンドル形電動車いすの販売側が十分な講習を施して使用者の運転技能を向上させること、および歩道の更なるバリアフリー化を進めていかなくてはならない。

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A.研究目的

 ハンドル形電動車いす(以下、ハンドル形)は道路交通法で歩行者として扱われている移動支援機器の一つである。ハンドル形の最大速度は平たん路において6.0㎞/hであり、段差の乗り越えは助走なしで2.5cmまで、助走ありで5.0cmまで可能である。また、機器の最大寸法は全長120cm、全幅70cm、全高109cmと定められている。ハンドル形は手動の車いすよりも前後に長いので、回転するのに広いスペースが必要になる。そのため室内利用に向いておらず外出時に利用されることが多い(大賀・田久保・木平・加藤・奥野,2009)。

 電動車いす安全普及協会の調べでは、ハンドル形の単年出荷台数は2006(平成18)年に15913台、2007(平成19)年に15632台、2008(平成20)年に16489台、2009(平成21)年に16,547台であり、使用者数は増加している。この機器の使用者の多くは高齢者である。ハンドル形を使用したことによる外出の変化としては「行動範囲が広がった」、「単独外出が可能になった」、「自由に外出できるようになった」、「外出回数が増えた」が挙げられている(安心院・西館,2009;中島・柏原・横田・四隅・飯田,2005)。足腰が弱くなったことで長距離の移動が難しくなった高齢者は、近隣に限った範囲に外出が制限されることが少なくない。このように外出範囲が狭まることにより、閉じこもりへ移行しやすいことが指摘されている(山崎・藺牟田・橋本・繁田・芳賀・安村,2008)。ハンドル形の使用は、狭まる可能性のある、あるいはすでに狭まってしまった外出範囲を維持もしくは拡大することができるため、閉じこもりの防止につながる。加えて、外出範囲が制限されないことによって、ひとと触れ合う機会が増え、QOLが向上することが期待できる。

 一方で、近年マスメディアにおいてハンドル形使用者の交通事故が多く取り上げられている。警察庁の調べでは、2009(平成21)年のハンドル形やジョイスティック形を含む電動車いす(以下、電動車いす)の事故は232件、そのうち死亡事故が12件であった。一般の歩行者と同様に、電動車いす使用者も道路を横断中に事故にあっているケースが多く、死亡者の約7割が道路横断中であった。また事故の相手は約9割が自動車であった。

 警察庁は電動車いすの事故を防ぐために、2002(平成14)年より利用者用、指導者用に分けた電動車いす安全利用に関するマニュアルを作成するなど対策を行っている。また、ハンドル形の各販売会社に所属する指導員が、ハンドル形納車時に利用者に対して操作方法や安全運転を指導している。さらに電動車いすの事故を防止するために、電動車いすの交通事故や事故時の損傷の程度に関する調査(米満・恒成,2004)や事故を想定した電動車いすの衝突実験、ハンドル形電動車いすの操作性に関する研究(大賀ら,2009;奥本・藤原・上野,2005)などが行われている。しかし、過去5年間(平成17年から平成21年)の交通事故件数をみると281件(平成17年)、258件(平成18年)、228件(平成19年)、232件(平成20年)、232件(平成21年)とほぼ横ばいの状況である。

 警察庁が毎年公表している電動車いすの事故件数は、電動車いす使用者の単独の事故、電動車いす同士の事故、歩行者とぶつかってケガをさせた事故を除いた数値であり、これらを含めればさらに多くの事故を経験している者がいると推測される。したがって、事故を防ぐ方策を検討するために、警察庁の公表している事故の分析にとどまらず、公表されていない事故やヒヤリ・ハット体験の事例についても分析を進める必要がある。そこで本稿ではハンドル形使用者の事故およびヒヤリ・ハット体験の内容について明らかにすることを目的とした。

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B.研究方法

1)調査対象者

 ハンドル形を使用している者24名を対象とした。対象者のうち男性は6名、女性は18名であった。年齢は50代が1名、60代が2名、70代が5名、80代が15名、90代が1名であった。居住地は茨城県(7名)、三重県(4名)、群馬県(3名)、福岡県(3名)、岡山県(2名)、新潟県(2名)、東京都(1名)、大阪府(1名)、大分県(1名)であった。住居は、一戸建てが23名、アパートが1名であった。独居者は5名であり、19名には同居者がいた。

2)手続き

 直接個別ヒアリング法によってデータを収集した。ハンドル形の販売員に協力を依頼し、ハンドル形の使用者(以下、使用者)19名を紹介してもらった。また、各地域の老人クラブ連合会から5名を紹介してもらった。本人の同意を得た上で、研究分担者及び研究協力者が直接自宅あるいは販売店を訪問した。調査の実施時期は2008年7月から2010年10月であった。調査時間は1名につき40分から90分であった。

(倫理面への配慮)
 本調査の実施にあたっては筑波大学人間総合科学研究科研究倫理審査委員会の承認を得た。

3)ヒアリング項目

 「使用者の属性」に関する項目が4項目、「ハンドル形の操作」に関する項目が1項目、「バックミラーの使用の有無」に関する項目が1項目、「事故およびヒヤリ・ハット経験」に関する項目が3項目の計9項目であった。

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C.研究結果

1)使用者のハンドル形の操作についての認識

 ハンドル形の操作について不安があるかについて尋ねたところ、「操作に不安がある」者は25%(24名中6名),「使用直後は操作に自信がなかったが今は(不安は)ない」と答えた者は13%(3名)、「操作に不安がない」者は62%(15名)であった。操作に不安がある者のなかには「前進することはできるが後退は怖い」、「(耳が遠くなっているので)自動車のクラクションの音が聞こえないのではないかという不安がある」「ブレーキをかける際には手を離さなくてはならないのに、自転車のようにハンドルを握ってしまう不安がある」と述べた者がいた。「使用直後は操作に自信がなかったが今は(不安は)ない」と答えた者のすべてが以前にバイクを使用した経験があった。あるバイク運転経験者は「ハンドル形を使い始めた当初は、バイクの癖で停車するときに足を路面に出してしまうことがあった」と述べた。バイクとハンドル形は形状が似ているものの、走行する場所も速度も異なる。彼らはハンドル形をバイクと同じように操作しようとした際に違和感をもち、それが操作時の不安につながったと考えられる。

 バックミラーを使用する者は29%(24名中7名)であった。走行中に後部を確認するためにはバックミラーが必要である。そのため周囲を目視し確認することと併用して、バックミラーを使用することが望ましい。しかし、利用者の約7割はバックミラーを使用していないことが確認された。使用者が後部確認の必要性について意識を高め、バックミラーを活用できるようになるためには、何らかの形で使用者に対する運転教育を行う必要がある。

2)事故経験

 事故の経験があるものは17%(24名中4名)であった。4名のうち1名が4回の事故を経験していた。以下に事故を「ハンドル形の操作の誤り(5事例)」、「ハンドル形同士の追突事故(1事例)」「自動車との接触事故(1事例)」に分けて示した。

(1)使用者のハンドル形の操作の誤り

使用者のハンドル形の操作を誤ったことによって起きた事故が5件あった。

事例1前方から歩いてきた歩行者と接触しそうになったためにハンドル形を停めようとしたが、急なことであったため、自転車のブレーキをかけるようにアクセルレバーを握ってしまい、ハンドル形は停まらず前方へ動いてしまった。歩行者と接触しなかったが、ガードレールにぶつかってしまった。事例2前進と後退の操作を誤り、車体を壁にぶつけてしまった。事例3停車しようとしてアクセルレバーを握ってしまい、駐輪している自転車に当たり、多くの自転車を将棋倒しにしてしまった。事例4ハンドル形の電源を切らずに降りていたにもかかわらず、再度ハンドル形に乗ろうとしたときにアクセルレバーをつかんでしまった。ハンドル形が意図せずに前進したので、バランスを崩して転倒しケガをした。事例5歩道と車道が分かれていない道路を走行中によそ見や居眠りをしたため、畑に落ちてしまった。

 ハンドル形はハンドルについているアクセルレバーを押す、あるいはハンドルと一緒に握りこむことによって操作するため、高齢者でも簡単に動かすことができる。一方で、突発的な事態が発生し、緊急に停止したいときにアクセルレバーを握る手がこわばってしまい、アクセルを緩めることができない可能性がある。特に高齢者の場合はアクセルレバーを離すことができないケースが多い(林,2002)。そこでハンドル形にはアクセルレバーを通常よりさらに握り込んだときに緊急停止する機能(握り込み緊急停止機能)が備わっている。緊急に停止するため制動距離は通常のアクセルを離したときに比べ、約半分の距離で停止する機種が多い(林,2002)。しかし、事例1や事例3のように、握り込む力が不十分であった場合には緊急停止しないことがあることから、使用者は危険を感じたもしくは感じそうな場合にはアクセルレバーを離す練習を積んでおく必要がある。

 事例2はハンドル形の操作に慣れていないことが原因であると考えられる。そのため操作に不安のある者に関しては、講習の回数を増やすなど、使用者が安全に走行できるように一人ひとりに適した練習を実施する必要がある。また事例4はハンドル形の電源を切らずに乗り降りをしたことが原因である。使用者にハンドル形の乗り降りの際には必ず電源を切るようにすることを伝えていく必要がある。

 事例5の事故が起こった道路は、歩道と車道が分離されておらず、また道路と畑との間にガードレールなどは設けられていなかった。このような道路では、ランドマークにする白線や、目標となる建物などの情報が少ないため、使用者が運転に集中できずにぼんやりと走行してしまう可能性がある。畑と道路との間にガードレールをつけるなどの環境整備が必要であると考えられる。

(2)ハンドル形同士の追突事故

 ハンドル形同士の追突事故を経験している者が1名いた。事故の内容は「ハンドル形を使用している友人と、ハンドル形を使用して前後に一列になって歩道を走行していた。信号になり停車したが、後方からきた友人は赤信号に気づかず、こちらの車体の後ろに追突した」であった。この事故では両者ともケガはなかった。この事故は前の車両の停止に気づくのが遅れたことに加え、急な出来事に対して停まる、避けるなどの反応がとれなかったことなどが原因であると考えられる。このケースはハンドル形同士の接触であるため、両者の身体に影響はみられなかったが、接触した相手が子どもや高齢の歩行者であった場合、相手に大きなケガをさせてしまう危険性がある。

(3)自動車との接触事故

 自動車との接触事故を経験している者が1名いた。事故の内容は「信号機のある交差点の横断歩道を走行中、左折してきた車に接触した。ハンドル形の右前輪部分が接触したが、ケガはなかった。自動車を運転していた女性は『(ハンドル形が)見えなかった』と話していた」と述べたと言う。この事故に遭った高齢者は「事故に遭わないように注意をしていたが、周りに認識されていないことを知って、怖くなった」と述べている。この事故によって両者にケガはなく、ハンドル形も車体に傷がついた程度で走行可能だったので警察に連絡はしなかったと言う。

 自動車と接触した現場は見通しのよい交差点であった。ドライバーがハンドル形の存在に気がつかなかったことが事故の原因である。先述したようにJIS規格によって定められているハンドル形の全高は109cm以内である。109cmの高さは5~6歳の子どもの平均身長と同等である。今回の事故の主な原因は横断歩道を歩行者が通行していないかどうかを確認していなかったというドライバーの不注意であるが、ハンドル形の存在を周囲が認識しづらいことも事故の原因の一つと考えられる。ハンドル形使用者のなかには、ハンドル形に旗を立てている者がいる。旗の位置は歩行者の顔のあたりである。このようにハンドル形使用者が周囲に認識してもらえるような工夫を検討していくことも、事故を防ぐ上で重要である。

3)使用者のヒヤリ・ハット経験

 ヒヤリ・ハットの経験がある者は50%(12名)であった。「舗装されていない、破損しているなどのバリアフリー化されていない道路を走行中に車体が傾いた」、「路上が砂で覆われているところで車輪が滑った」などの経験をもつ者が最も多かった(50%,12名中6名)。歩道上のアスファルトの破損は車いす使用者などのバリアにもなるため、定期的なメンテナンスをすることが必要であることが指摘されている(水野・石上・西村・安心院・増田・徳田;2007)。

 また、自転車や自動車と接触しそうになった経験がある者(42%,5名)がいた。警視庁の調べ(2009)では、電動車いす使用者の死亡事故の多くが車道において自動車との間で起こっている。ハンドル形は道路交通法で歩行者として扱われているため、通常は歩道を走行する。しかし、歩道に障害物があったり、その他の歩行者や自転車との接触を回避するために、車道を通らざるをえないことがある。このような事態を防ぐために、ハンドル形と他の通行者がすれ違うことができる幅がある歩道を設けることが望ましい。また、側溝に柵を設けたり、道路と畑の間にガードレールをつける、歩行者が安全に移動できるように障害物を歩道に置かないようにするなど、危険を回避できる物理的な配慮を行う必要がある(西館ら,2007)。

 さらに、交差点を渡り切る前に信号が赤になってしまった経験を挙げた者がいた(25%,3名)。成人男性の歩行速度は時速4.8㎞である(中村・斎藤,2000)。ハンドル形の最高速度は時速6㎞であるから、歩行者よりも速く進むことができる。しかし、使用者の中には速度を4km以下に設定して走行している者が多い。また、ハンドル形は歩行者のように速度を柔軟に調整することができない。そのため、信号が赤に変わる前に渡りきることができないという事態が生じると考えられる。

4)使用者のハンドル形の危険性に関する認識

 使用者にハンドル形を使用する際に危険を感じるかどうかについて尋ねたところ、「危険~33~である」と答えた者が63%(15名)であり、半数以上が危険であると感じていながらハンドル形を使用していることが確認された。使用者の多くは機器の操作時の危険を回避するための工夫をしていた。その工夫のとは、「ひと、自転車、自動車の通りが多いところへは行かない」(53%)、「バリアフリー化されているところを選んで走行する」(47%)、「ひと、自転車、自動車とすれ違う時は彼らが通り過ぎるまで道路の端で停止する」(40%)、「周囲にわかるように派手な色のハンドル形を使用する」(7%)などであった。

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D.考察

 ハンドル形使用者のうち、ハンドル形の操作に不安を感じている者はそれほど多いとは言えなかった。しかし、事故やヒヤリ・ハットの経験をした者のなかには、操作や判断を誤っている者がいた。また、使用者本人が危険のないように気を配っていたとしても、事故やヒヤリ・ハットに結びついていることがあった。本調査の結果をふまえ、「ハンドル形購入時の教育の徹底」「ハンドル形購入後の使用者および機器に関するフォローの必要性」「道路のバリアフリー化」に分けて具体的な対策を以下に挙げた。

1)ハンドル形購入時の教育の徹底

 ハンドル形の販売者は、購入者に対してハンドル形の操作に関する教育を行っている。しかし、メーカーによって教育方法が異なっていることから、ハンドル形使用者に対して共通した知識や技術が伝えられていない可能性がある。すべてのメーカーに共通したハンドル形の講習に関する教育方法のマニュアル化が必要であると考えられる。また操作方法に関する教育や実際の走行練習のみでなく、他の通行者とのすれ違い方や、急停止の練習などさまざまな場面を想定した教育を実施する必要がある。このような場面を容易に想定することができるシミュレーションを用いた教育を実施していくのも有効であると考えられる(中野・山田・山本,2008;矢口・湊・菅谷,2008)。

 ハンドル形使用者の中にはハンドル形を使用して商店などの施設内を利用する者もいれば、自転車と同じように施設入口付近までハンドル形を使用し、施設内は杖などを利用して自力で歩行する者もおり、ハンドル形の使用方法に多様性がある(中島ら,2005)。そのため一人ひとりの利用状況によって、注意すべきことが異なる。はじめてハンドル形を使用して移動する道路や施設などに関しては、家族(もしくはケアマネージャーなどの本人の生活をよく知る者)に安全であるかどうかについて評価してもらうとよい。そのためには販売者はハンドル形購入時に本人だけでなく、家族(もしくはケアマネージャーなどの本人の生活をよく知る者)に対してもハンドル形に関する知識を伝えていく必要があると考えられる。

2)ハンドル形購入後の使用者および機器に関するフォローの必要性

 本調査において対象者の1人が複数回の事故を経験していた。事故が起こるのは本人だけの問題ではないが、ヒヤリ・ハットの原因を含めてなぜ事故が起きてしまったのか、今後どのようなことに注意すればよいのかについて教育内容を検討し、使用者全員に教育を行っていく必要がある。またハンドル形を長期間使用しているうちに、使用者の心身の機能が低下したことが原因で、その操作に問題が生じることがある(飯干,2006;Teasdale&Simoneau,2001;Schmidt,1994)。特に正しい判断が難しくなる認知の発症・進行や、視覚、聴覚の低下があった場合には危険である。70歳以上の高齢者(自動車)ドライバーに対して高齢者講習が実施されているように、ハンドル形使用者に対しても定期的に高齢者の身体能力に問題があるかどうかについて評価、講習を行う機関が必要であると考えられる。また自動車の車検と同じようにハンドル形に不具合がないかどうかについてもチェックする機関があるとよい。

3)道路のバリアフリー化

 ヒヤリ・ハットの経験がある者のなかには、道路がバリアフリー化されていないことによって車体が不安定になったと答えた者がいた。またハンドル形の危険を回避するために道路環境が整っているところを選んで移動すると答えた者がいた。このようにバリアフリー化されていない道路は、ハンドル形使用者の行動範囲を狭めてしまう可能性がある。高齢者、一般市民が移動しやすいような環境整備をさらに進めてしていく必要がある。

 ハンドル形使用者は危険を回避するために、ひと、自転車、自動車の通りが多いところを避けたり、一般市民とすれ違う時には彼らが通り過ぎるまで道路の端で待つといった配慮をしていた。このように自らと他者の安全を守るために高齢者自身が工夫をすることは重要であるが、一般市民にも高齢者の移動に関して適切な支援と配慮をすることが求められる。一般市民に対してハンドル形がどのような機器なのか、どのような配慮が必要なのかについて知識と技術を学ぶことのできる交通バリアフリー教育を実施することで、一般市民がハンドル形に関して正しい認識をもち、使用者に対しての安全と移動の効率性を保とうとする態度を形成することができると考えられる。

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E.結論

 ハンドル形電動車いすは高齢者の外出の機会や行動範囲を拡大する非常に有効なツールであるが、使用する高齢者の操作方法の習得が不十分であること、環境が完全にはバリアフリー化されていないこと、高齢者が交通ルールを十分に身につけていないことなどの理由から、事故やヒヤリ・ハット体験に会っている現状がある。それを防ぐためには、ハンドル形電動車いすの販売側が十分な講習を施して使用者の運転技能を向上させること、および歩道の更なるバリアフリー化を進めていかなくてはならない。

F.研究発表

  1. 論文発表
    なし(現在投稿中)
  2. 学会発表
    安心院朗子,水野智美,西館有沙,徳田克己(2010).高齢者の外出に関する一般市民の認識1-移動支援機器に対するイメージについて-,日本教育心理学会第52回総会

G.知的財産権の出願・登録状況(予定を含む。)

  1. 特許取得
  2. 実用新案登録
  3. その他

なし

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